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もう一人の自分 [地域]

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 3月に入っても寒い日が続いています。雨がよく降りますし、晴れても風が強かったり冷たかったりで、一度暖かい思いをした身には真冬より堪える気がしています。それでも自然の動きは進んでいて、枯れ葉色だった休耕地に緑が目立ちはじめ、梅も綻びかけてきました。

 野山でも鳥たちの動きが活発になってきました。ウグイスはきれいな声で鳴き、家の裏にもヒヨドリ、冬の間さっぱり姿を見せなかったスズメの群れ、ムクドリ、カワラヒワ、メジロ、ツグミたちが賑やかに動き回っています。


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 ヤドリギの実を食べるヒレンジャク

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 ヒレンジャクは冬鳥ですが、冬の終わりを告げる鳥でもあるそうです。

1-DSC_1666.JPG 2月半ば、鳥仲間に教えてもらった場所へ遠征して、初めてヒレンジャクを撮影してきました。ヒレンジャクの群れが止まる木々は高く、私のカメラでは少し遠かったです。

 3枚目の写真、尾が鮮やかに赤いヒレンジャクです。群れの中に尾が黄色いキレンジャクも混じることがあるそうですが、今回は見つけられませんでした。


 勤めに行かなくなって、家で妻とお喋りをすることが多くなりました。テレビの話題、ご近所のことやお寺のことなどが話題に上がることが多いです。ただ最近会話の中で妻に指摘されることが多くなってきました。

 聞き間違いや記憶違い、物忘れ、あげくは会話の反応が鈍いなどと言われます。ご近所や同級生で認知症の人が出ているので神経質になっているのかも知れません。

 確かに自覚することも多いのです。言葉や名称、名前などが出にくくなってるのは確かです。物忘れは今に始まったことではありません。しかし、そう言う妻も似たり寄ったりなところもあります。

 お互いに鏡に映る己の老いを見るように、相手の失敗を指摘し合いなすりあって過ごす他愛もない老夫婦の毎日です。どちらかというと6歳年上の私の方がやや分が悪いようです。


 先月のことでした。そんな私が大失態をやらかしてしまいました。私は現在、鍵を3つ預かっています。シルバー人材センターで働いている施設の鍵と、神社の鍵、それから今年からお寺の総代もすることになったのでお寺の鍵の3つです。

 神社とお寺の総代を兼任するなんていかにも日本的ですが、私のまわりにはけっこうおられます。他にも地域や営農組合、森林組合などいくつも組織があるので一人で何役もこなさないと回りません。

 65歳まで働くのは当たり前、私のように70歳まで働く人もあるので、役を引き受けられる人が限られてきます。我が檀家などは軒数も少ないので適応年齢に達すると否応なしに当てられてしまいます。

 ある日のことでした。先輩総代とお寺のゴミの片付けをすることになりました。剪定した木の屑などが放置されたままになっていたので、集めて捨てに行きました。

 それが土曜日で、翌日の日曜日は神社で祭礼がありました。祭礼は正装と決められているので、退職してもう着ることがないと思っていた背広にネクタイ姿で出かけました。

 早朝7時から準備を始めます。祭礼はその時によって少しずつ違いますが基本は同じです。私は総代になって、もうすぐ1年になるのになかなか覚えきれていません。

 祭礼が始まる9時まであたふたと準備をします。祭礼自体は30分ほどのもので、済んでしまえば後は片付けをして終わりです。ただそれだけのことなのに、終わった翌日はなぜか腰や背中、脇腹などに軽い筋肉痛を覚える始末です。

 無事祭礼も終えてのんびりしていた翌日のことでした。妻がお寺に行く用事があって鍵を取り出そうとキーボックスを開けたところ、鍵がないと言います。前々日に使ったのは私です。ゴミを処分するとき、お寺の中にも廃棄物がないか確かめに入ったのです。

 妻にどこへやったと言われても、自分ではキーボックスに返しているものと思っていたので心当たりがありません。しかし、よく考えると確かにキーボックスに返した記憶がありませんでした。

 それから大騒ぎになりました。夜でしかも雨だったのでお寺へ探しに行くことも出来ず、その夜は着ていたジャンパーはおろか着てもいなかった上着のポケットやズボンのポケットまで探したり、またいつものように自分の部屋のどこかにぽいと置いているかも知れないと部屋中家捜しました。もちろん家の中も二人で探しました。

 翌朝、お寺へ行き、私が立ち回ったあたりを中心に妻と二人で探しました。私が一番怪しいと思った、ゴミを廃棄した所にも行きましたが見つかりませんでした。

  ゴミを捨てに行った日は寒かったので、私はジャンバーを着て手袋をしていました。お寺のキーには、金属製のブローチのような形をしたキーボルダーが付いていて、手袋に引っかかりそうで心配だったのは覚えています。ジャンパーの浅いポケットに手や手袋を出し入れしているうちに引っかけて落としてしまったのだと思いました。

 2日ほど家の中、お寺回り、先輩総代さんがゴミ捨て用に出してくれた軽トラックの中まで探してみましたが見つかりません。誰かが拾って届けてくれているかもしれないと、交番に遺失物届けにも行きましたが、拾得物の届けはありませんでした。

 お寺は檀家の建物です。誰かが拾って悪用されたりしたら大変です。総代になってまだ数ヶ月のこの失態、いつまでも紛失したままにはしておけません。

 キーは、マスターキーのナンバーさえ分かればホームセンターで作ってくれたりネットでも注文できるそうです。しかし、ナンバーが分からないとホームセンターでは複製の複製は作ってくれません。そうなると鍵ごと交換とおおごとになります。

 警備会社のセキュリティーキーは、言えばすぐに手配してくれるそうです。但し、あと2名の総代が持っているキーの登録をし直さないといけないことになりそうです。もちろん出費もかかりますがそんなことも言っていられません。

 遺失物届けを出したあと、明日は鍵番号を調べ、キーが作り直せたらセキュリティ会社に連絡をしようと思っていました。そんなとき、外出先の私に妻から電話がありました。「あった、見つかった」と。

 祭礼の日に着ていたスーツのスラックスにアイロンをかけようと持ち上げると、後ろポケットからお寺のキーが落ちてきたのだそうです。

 それを聞いたときはほんとうにほっとしました。家の中で見つかったのなら悪用された心配はありません。キー番号を調べたり、警備会社の世話にならなくても済みます。すぐに警察に電話して遺失物届けを取り下げてもらいました。

 ただ、不思議です。ゴミを捨てに行ったのは土曜日です。それが翌日の日曜日の祭礼用のスーツのスラックスになぜ入っていたのか。まさかそこまでは探索していませんでした。

 お寺の鍵は勝手口のキーボックス、神社の鍵は私の部屋に保管しているので、取り間違えることはありません。しかも私はキーをスラックスの後ろポケットに入れる習慣はないのに、なぜそこに入っていたのか。

 一番妥当な解釈は、神社の鍵を持っていかないといけないと思いながら、間違ってキーボックスのお寺の鍵を持ち出したと言うことしか考えられません。それでもスラックスの後ろポケットは不思議です。スーツなら、深いポケットがいくつもあるのに。

 祭礼が終わった後、社務所の鍵を閉めるときに、私は鍵を忘れてきたと言って別の総代さんに戸締まりをしてもらったのです。つまり間違えて持ってきたどころか、私は鍵を持っている自覚もなかったのです。

 古い記憶も最近はずいぶん怪しくなってきましたが、昨日の自分の行動が思い出せない。こんなことがあるのでしょうか。それともどこかにあずかり知らないもう一人別の自分がいるのでしょうか。

 あれこれと推論を立て、老化した頭の記憶の謎を探るのですがこれと言った答えは見つかりません。ただ今回の紛失、毛糸の手袋に引っかかりそうなキーホルダーにあったと思います。

 他にもいくつかの思い込みがありました。まさかと思っていた翌日使用のスーツを調べなかったのも落ち度でした。

 何か失敗するときは必ず原因のひとつとして思い込みがある気がします。自分の記憶の奥底と失敗の原因を探るのは、ミステリー小説の謎解きより難しいかも知れません。そしてたとえどんな答えが見つかったとしても言い訳にしかなりません。

 このことがあって以来、妻が私を見る目がいっそう厳しくなっているこのごろです。

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 ツグミも冬鳥です。もうすぐ旅立つシベリアへの旅に思いを馳せているのでしょうか。


 サブスクをやめて、レコードやCDを最近は聞いています。そうするとどうしても持っているアルバムからになります。久し振りに聞いたアート・ペッパーの「モダン・アート」滑らかなアルトサックスの音色、自在なアドリブ、やはり良かったです。曲はアルバムトップのBlues Inです。アルバムのラストはBlues Outという曲で締め括られています。 


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